ビジネスコーチの心得

「教える人」をやめた日から、成果は動き出す

コーチを始めたばかりの頃、私は完全に勘違いをしていました。

「いいコーチ=いいアドバイスをたくさん出せる人」だと思っていたんです。

だからセッションのたびに、頭をフル回転させて答えを探しました。相手が黙ると不安になって、こちらから解決策を並べる。「こうすればいいですよ」「私ならこうします」。

一見、親切ですよね。でも、うまくいきませんでした。

クライアントはその場では「なるほど!」と言ってくれる。なのに、次に会うと何も変わっていない。行動していないんです。

なぜか。答えが「私のもの」だったからです。

心得その1:答えは、相手の中にしかない

人は、自分で気づいたことしか本気で動きません。

他人から渡された正解は、借り物です。腑に落ちていないから、忙しくなると簡単に手放してしまう。

私が「教える人」をやめて、「引き出す人」に切り替えたとき、はじめて景色が変わりました。

やることはシンプルです。答えを言いたくなったら、ぐっとこらえて、こう聞く。

「あなたは、どうしたいですか?」

たったこれだけ。でも、ここから相手が自分の言葉で語り出したとき、その言葉には熱があります。借り物ではなく、自分の決断だからです。

心得その2:沈黙を、こわがらない

これは今でも難しい。

相手が考え込んで黙る。5秒、10秒。この沈黙が、コーチには永遠に感じられます。

新人の頃の私は、耐えきれずに口を開いていました。「たとえばですけど…」と、答えを差し込んでしまう。

でもあの沈黙こそ、相手の頭がいちばん働いている時間だったんです。

考えている人の邪魔をしていたのは、私でした。

今は、待ちます。相手が自分の内側を掘っている間、こちらは静かにうなずいて待つ。答えは、その沈黙の底から出てきます。

心得その3:成果は、相手のもの

クライアントが結果を出すと、うれしいですよね。

このとき、心のどこかで「私が変えた」と思いたくなる。ここに落とし穴があります。

コーチが手柄を求めた瞬間、関係はゆがみます。相手を「自分の成功事例」として見はじめるからです。

成果は、動いた本人のものです。私たちは、その人がもともと持っていた力を、少しだけ信じ続けただけ。

この一歩下がった立ち位置が、長く信頼されるコーチの条件だと思っています。

心得その4:相手を、値踏みしない

「この人は本気度が低いな」
「たぶん続かないだろうな」

セッション中、こういう判断が頭をよぎることがあります。

でも、コーチがあきらめた相手は、まず変わりません。人は、自分を信じてくれない相手の前では本音を出せないからです。

私が決めているのは一つ。目の前の人の可能性を、その人以上に信じること。

甘やかすのとは違います。信じているからこそ、耳の痛いことも正面から伝えられる。

最後に:コーチは、主役ではない

コーチの仕事は、相手を輝かせることです。自分が輝くことではありません。

答えを教えず、沈黙を待ち、手柄を譲り、可能性を信じる。

どれも、目立たない仕事です。派手さはありません。

でも、この地味な積み重ねの先で、クライアントが自分の足で立ち、自分らしいやり方で成果を出していく。その姿を隣で見られること。

それが、この仕事のいちばんの報酬だと、私は思っています。

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